もう一つのフットボール

あなたには全てを賭けて打ち込めるものがありますか?

NO END SUMMER.

僕の大好きなサッカーと同じフットボールの名を持つ

ラグビーと言うスポーツを

嫌いだったりイケメン君を陥れる手段だったりで

終わった高校時代からしばらくの間は

関わる事も無かったのだが

ひょんな事からその名前を聞く事になるのは

バブルが弾けてコマーシャル業界から足を洗い

帰郷後今の会社に就職してスグの事でした。

 

ウチの会社の社長さんが所属している

ウチの職場のある邑のロータリークラブ

ニュージーランドのタウランガと言う町と

姉妹縁組を締結していて

そのクラブの創立何周年かの記念事業として

交換留学生をお互いに受け入れる事になったのです。

当時の社長さんの家には

今の専務を筆頭に高校生中学生がいて

しかも会員としては年が若い方に分類されていたため

ホームステイ先として

何人もの留学生の子がやってきました。

何故か女の子が来ることが多く

日本に来た記念に振袖で写真を写したり

倉敷の美観地区に観光に行ったりもしたのですが

普段は僕が卒アルを作っている学校に

受け入れ先をお願いして学校へも通っていました。

 

そんな彼女達によく聞かれたのが

「その高校にはフットボールのクラブがあるか?」

って事でした。

一番最初に聞かれた子に「もちろん」って答えたのですが

その子がとても残念そうな顔をして

「違うフットボールだった」って帰宅したのを

今でも鮮明に覚えています。

それ以来は留学生の子を受け入れいている間は

ウチの会社ではサッカーの方が

もう一つのフットボールとなっていました。

 

そしてある年の事です。

今からおよそ10年前くらいになるだろうか

ウチの社長さんの家にNZからの交換留学生として

ケイティと言う名前の女の子がやってきた。

それまで来た子達より少しおとなしめで

しかもホームシックになりかけていた彼女は

受け入れ先の高校から帰宅するやいなや

「つまらない行きたくない」

と泣き出してしまったそうだ。

授業中や休憩時間はおろか昼休みさえひとりぼっちで

お昼ご飯も一人でさみしく食べたと言う。

そのクレームは翌日即学校ではなく僕の所へ伝えられた。

当時その学校には国際コースと言う

オーストラリアやカナダにホームステイに行ったりする

国際交流や海外発展に目を向けたコースがあって

その1年生のクラスへ案内されたケイティ。

いくら進学目的オンリーではないコースとはいえ

5月という県内有数の進学校に入学したばかりで

自分のことだけでも精一杯の子が多いところへ

連れて行った学校も学校だ。

僕はその日の昼休みに彼女を別のあるクラスへ案内する事にした。

 

国際コースの3年生のそのクラスは

自ら「TKさんの高校での前線基地」を名乗り

実際卒業アルバムのクラス写真にも僕が写ってたりした

3年A組の生徒たちは事情を聞きそして僕の

「この学校の悪いイメージだけ持たせて帰らせていいの?」

と言う問いかけに持ち前のサービス精神を遺憾なく発揮して

兄弟が1年にいる子は弟や妹のところに

部活をしてる子は後輩のところにケイティと一緒に行って

その一週間後には彼女が

「学校へ行くのが楽しみ」と言うまでに世話を焼いてくれ

しかも僕に

「今度泣いて帰ってきたら、あることないこと顧問の先生に言いつける」

と半ば脅迫されたサッカー部は

県下有数の進学校に通う頭脳をフル回転させ

近隣のラグビー部のある学校に道具一式を借りにいって

放課後一緒にラグビーまで楽しんでくれた。

もっとも楽しかったのは最初の数分だけで

後は鬼コーチと化した彼女に超スパルタでしごかれている様にしか

僕には見えなかったけど。

 

その後帰国したケイティは今では超親日家の通訳さんとして

観光客のお世話をしているらしい。

特に岡山からの観光客には

ツアーではなかなか行けないスポットまで

ガイドを兼ねて連れて行ってくれるそうです。

お宮参りの撮影に来てくれた某高サッカー部出身のS君は

「そう言えば1時間かけてチャリでラグビーボール借りに行きましたね」

なんて

某田舎地方の某一部地域では

超マニアックな地域限定でNZのラグビーワールドカップ

結構話題として盛り上がったりもできるのです。