もう一つのフットボール

あなたには全てを賭けて打ち込めるものがありますか?

序章。

今思えば当時の僕はチームスポーツの競技に不向きな子だった。

夜空にキレイな放物線を描く田淵さんのホームランに憧れて始めた野球も

 少年野球の時点で監督のサインをイチイチ確認しながらする

 と言う行為がウザったくてイヤだった。

 

家族の誰もが中学になっても

 きっと続けるんだろうなって思っていた野球をあっさり止めてしまったのも

 実はソコが一番大きな理由であって

 前半開始のホイッスルが鳴ってしまえば監督の言ってる事なんか

聞き流そうと思えばできるから選んだのがサッカーで

 ヨハン・クライフだって言い訳でしかなかったのだ。

 

そんな協調性に難のありすぎるヤツが入学したのが

 マグレで受かった進学校だったと言うのが

 全ての間違いの始まりだったのかも知れない。

 もしレセプションで通った私学に想定どおりに進学していれば

 マジメにサッカーに取り組むチームメートや先輩に考えを叩き直されるか

 根本的な間違いに気づいていたかも知れないが

 基本的にお勉強が主体でいい大学に行く為の手段として

 その高校を選択した生徒が圧倒的多数を占め

 授業が済んだ後も

すぐ塾だなんだと忙しく勉学に励む生徒の中に放り込まれた

 ソコへ入った事で目的を達していた僕とは

 多分に相容れない溝があったとしても不思議ではない。

 

「世界的にはサッカーじゃなくて、フットボールって言う方が普通なんだぜ」

 なんて偉そうにヌカス上級生にイラっとした新入部員歓迎会で

 そのガリ勉風メガネ君を一緒にいた同級生がなだめてくれてなければ

 もう少しでイッチャってたなんて

 今だから笑い話風に書けるんだけど。

 

そう言う子だった僕には

 どっかの誰かさん(←クリックしてね)みたいに

 通用門で、ギョーザみたいな耳を持ち

 顔に傷のある屈強な上級生に両脇を掴まれてたりなんかしたら

 入学早々の不祥事なんて事になっていた可能性だって大なのだ。

 

良かったウチの母校にラグビー部とかなくって。

 

 

基本的に

自分に優しく出来ている僕はしなくてもいい我慢や苦労は

 出来うる限り排除して選択肢に入れてあげない。

 だからキツイ練習なんかするくらいなら別に

レギュラーじゃなくても良かったのに

ぐらいのテイストで部活に出ていたら

 特に問題は無かったのかも知れなかったのに

 その頃のスター選手達が繰り出すスーパープレーをマネするのは

 楽しいし気持ちいいからちっとも苦じゃなかった。

 

ヨハン・クライフミッシェル・プラティニ

ディエゴ・マラドーナそしてロベルト・バッジオ

 テレビで見るスター選手達の繰り出す技の数々を夢中になって練習していた。

 たいして強くも上手くもない進学高のサッカー部。

 春の連休明けには3年生も引退し

 決して厚くない選手層が益々薄くなってしまう頃

 協調性に欠け態度に少し難があるとはいえ一人で勝負できる

足癖の悪い1年生をレギュラーで使ってみようと思った顧問の先生を

 さすがに責めるのは酷かも知れない。

 特に僕らの学年は何を間違ったのか中学の時

市の選抜候補に挙がった選手が二人も入学してきていたので

 やっとレギュラーになれると思っていた2年生が

 3人もチャンスを失う形になってしまった。

 しかも市の選抜チームで大活躍したMFのN君が

 

「Kがトップにいたらプレーしやすいです」

 

なんて顧問に言っちまったもんだから

 足癖が悪いドリブラーへの風当たりは強くなる一方で

 

「文句は俺を一回でも止めてから言えよ」

 

って思うだけで言わないようにしてたつもりが

 どうやら態度にハッキリとでてしまっていたようで

 色々メンドクサクなった挙句退部届けを出したのでした。

 

すっと学級委員を歴任するような人格者のN君が

 僕が退部届けを出した時の捨て台詞の

 「真夏に本気でサッカーをするのは大馬鹿者」の前に言った

 「あのア○ンダラの先輩に気を使ってまで」

 の部分を省略して先輩達に報告してくれた為

 一応円満に退部できたどころか

 実はいつでも戻れるように休部扱いにしてくれてたのに

 お馬鹿さんな道を謳歌してしまった事(←クリック)は今でも本当に心残りなのだ。

 

だからこそ専門学校で知り合ったイカツイ坊主頭と

 インチキなサッカーチームを作った(クリック)んだけど

 理由はどうあれ同じようやり方でチームを作り

 ずっと戦い続けてきたあの人(クリック)に

 僕のチームと同じように普通に戦って普通に散ってくれって思ったのも

 天邪鬼な僕にすれば当然っちゃ当然なんだ。

 

 今や星の数ほど無数に存在するブログの中で

 こんなにもよく似た経緯と実力を持つ私設チームの首謀者同士が

 そんな事知らないまま知り合えた偶然は

 形は違えどフットボールという名前のスポーツが

 引き合わせてくれた縁なのかも知れません。